大学時代、私は法学部の学生でした。法律に興味があるとか、弁護士や裁判官になりたいと思っていたわけではありません。あることが切っ掛けとなって国際政治や国際関係に興味を持ち、そういった勉強ができるところを探していたところ、たまたま私が入った大学は法学部に関連の学科があったというのが法学部を選んだ理由です。
余談ですが、当時は国際政治学部を持っている大学は少なく、私が入った大学のように法学部であったり、社会学部、文学部といった学部であったり、大学によって国際関係が学べる学部はさまざまでした。
したがって民法や刑法などは総論程度しか授業を取っていませんから、法学部の学生とは言っても、特に法律に詳しいわけではありません。それ以前に、それほど熱心な学生ではありませんでしたから、大学時代に学んだことを、今、どれくらい覚えているかと聞かれれば、ほとんど何も残っていないというお恥ずかしい次第です。
しかし、大学時代に学んだことで、1つだけですが、その後の生活や仕事で留意し、役立ててきたことがあります。それが表題の「立場が変われば見方も変わる」ということです。
大学1年生の時、高校を卒業したばかりの私にとって授業はとても新鮮でした。専門家の先生の話は、すべて正しいものと思い、感激しながら授業に臨んでいました。ところが、2年生になって、その思いを変える出来事がありました。
今でも話題になる「日本国憲法第9条」についてです。1年生の時に受けた憲法の授業で、著名な憲法学者であるその先生は条文を詳細に説明してくださり、「このような理由で自衛隊は違憲である」と話されました。憲法など、いえ、法律そのものに素人の私は、そのお話を伺って「なるほど」と納得しました。一方、2年生の時に受けた国際法の授業では、これも著名な国際法学者である先生は、条約などの話をされ、それらから判断して「自衛隊は合憲である」という話をされました。その話を伺い、私はまた「なるほど」と納得したのです。
いずれも立場は違うものの、長年研究を重ねてこられた方々のご意見です。私には、いずれが正しいのか判断することはできませんでした。いずれの判断も正しく思えました。これは一例にすぎません。その後もどちらも正しいと思える話にたくさん出合いました。
立場が変われば見方は変わるのです。ですから一方的に自分と違う人たちの考えを「間違い」と否定するのではなく、相手の考え、その根拠を見定めてこそ、解決の糸口が見つかるのだと思います。私たちがしなければいけないのは、さまざまな違った考えの人たちの話を聞いたり、それらの人たちが書いたものを素直な気持ちで読んでみること。異なった結論に導かれた根拠がどこにあるのかを見つけ出すこと。
私は、これからも「立場が変われば見方が変わる」ことを心して、さまざまな出来事を見ていきたいと思っています。
nf528主宰 二神 典子