近頃は少し時間ができたので、旅行に出かける機会ができました。ロータリーの友事務所に勤めていたとき、取材や講演などで日本全国、さまざまな所に伺いましたが、そのほとんどが空港や駅と会場だけ、時折、地元の方にその土地の名所に連れて行っていただくこともありましたが、仕事の合間なのでゆっくりと時間を取って見学することはできませんでした。「ゆっくりと来たいな」などと思いながら、実現できないでいたのですが、それらの地をゆっくりと訪れる機会ができてきました。
夜は温泉に入り、美味しいものをいただき、宿でゆっくりと時間を過ごします。昼は気に入った写真が撮れるまでひととこに滞在したり、町並みを楽しみながら歩いたりしています。私は混雑を避けて平日に出掛けることが多いので、比較的静かにのんびりとした時間を過ごすことができていますが、最近、人気の観光地には人が集まりすぎて問題になっているところも多いと聞きました。岐阜県の白川郷は、皆さまもよくご存じの合掌造りで有名な所ですが、この時期も観光客が集まりすぎて、駐車場も足りなくなってしまったとのこと。苦肉の策として、駐車場を予約制にし訪れるクルマの台数を制限したという話をニュース番組で見ました。
白川郷のように以前から観光地として有名な所だけでなく、今まで地元の人しか知らなかった、いえ、地元の人も気がついていなかったような素晴らしい景色を、たまたま誰かがインスタグラムにアップして、それまで誰も訪れなかったような所に観光バスが殺到しているという話もよく耳にします。
私などは、こんな素敵な景色を見つけて、こんなに素敵な写真を撮る感性があるなんて、うらやましい才能だなと呑気に考えていただけなのですが、多くの人がこの景色を実際に見たい、自分もこんな写真が撮りたいと、そこに訪ねて行くのです。
観光による収入を当てにしているまちや人々にとっては、多くの人に来てもらうことは嬉しいことかもしれません。しかし、静かに暮らしていた人々にとって、突然、多くの観光客に訪ねて来られるのは迷惑な場合もあるでしょう。まちにクルマがあふれ、トイレが足らず、自宅の敷地に入り込んで写真を撮られ……。そもそも多くの人々を迎える設備が整っていないのですから。
これをチャンスととらえ設備を整えても、突然のブームは、突然消え去ってしまうリスクも多く、地元の人にとってはよいことはあまりないように思います。
このように受け皿よりも多くの人たちが訪れるのは日本だけではなく、世界中で問題になっているようです。冒頭に書いた通り、私もいろいろなところに出かけていますが、旅行中の日常ではない世界を楽しんでいる私がいるその場所には、日常の生活をしている人々がいるということを胸に刻んでおかなければいけないと思った次第です。
nf528主宰 二神 典子