自分が生まれ育ったふるさとから都会に移り住んで仕事をし、そのまちに税金を納める。私もそうですが、このようなケースは多いと思います。貴重な税金を使って育てていただいたのに、そのふるさとには何もお返しができていないのです。
私たちのふるさとの多くは過疎に悩み、税収の落ち込みに悩み、住民のニーズに十分に応えることができなくなっています。一方、都会には多くの働く人たちが集まり、多額の税収を当てにできます。
そんなことから出てきたのが、ふるさと納税ではなかったのでしょうか。私は、当初、これはとてもいい制度だと思いました。もちろん、今住んでいるまちにもお世話になっているのですから、そこに税金を納めるのは同然のことですが、何もお返しのできていないふるさとにささやかでもお返しができることはいいことだと思ったのです。確定申告をすれば、ふるさとに納税した分は返ってきますが、それは基本的に納める税金は同じ、余分に税金を納めないためだと思います。
それなのに最近、ふるさと納税の話題と言えば、返礼品に何がもらえるとか、いくら得をしたかという話題ばかりでした。いろいろな市町村の返礼品を一度に見比べて納税先を決めることができるサイトまでできています。収めた金額から2,000円引いた額の税金が戻ってきますから、2,000円でお肉が1万円分届いたとか、旅行にでかけたとか……。でも、それって何なのでしょうか。私腹を肥やすということではないのでしようか。もちろん、返礼品目当てで増えた税収で、十分に住民サービスができるようになったまちもあるようですが、それでも、この制度には疑問を感じます。
加熱するふるさと納税に対して、政府は、返礼品は3割までとか、そのまちに関係のあるものにするといった規制をかけるとのことですが、個人的には3割でも多すぎると思っています。税金でそのまちに関係のない個人が潤うことがあってはいけないと考えるからです。税金は、あくまでもそのまちに住む人のために使われるべきものです。
ところで最近はクラウドファンディング型のふるさと納税も増えてきていると聞きました。そのまちの産業を育てたり、環境を保護したり、または、子ども食堂の資金にしたりという趣旨で出資者(納税者)を募るといったものです。また、地震や豪雨などの災害復興のためにふるさと納税をし、その趣旨に沿ってそのお金が使われるケースも出てきました。こういったことなら、ふるさと納税はそのまちのために使われることになります。加えて何かわけのわからないことにお金が使われるのではなく、自分が共感した活動に使われるのですから、言うことなしです。こういった形のふるさと納税が普及し、私利私欲のためではなく、そのまちを支援するためにふるさと納税をするようになってほしいものです。
日本には寄付文化は根付いていないと言われますが、ふるさと納税が寄付文化を推進する一助になることを願います。
nf528主宰 二神 典子