羹に懲りて膾を吹く

日本国内の緊急事態宣言が解除されてホッと一息というところですが、事前に心配されたほどには街に人が戻っていないようです。プライベートは今週末、仕事は週明けから動き出すというところなのでしょうが、ニュース番組などを見ていると、人々の不安感は消え去っていないということがわかります。
表題の「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」ですが、羹とは「野菜や魚肉を入れて熱く煮た吸い物」のことで、膾は「魚、貝、肉、野菜などを刻んで二杯酢や酢味噌などで調理した料理」のことだそうです。つまり「羹の熱いのにこりて、冷たい膾も吹いて食う。一度失敗したことに懲りて無益な用心する」(広辞苑)ということ。言い換えれば過剰防衛ということになるのでしょうか。
今、私たちの多くはコロナウイルス感染過大という得体の知れない、経験のない事態に遭遇し、さまざまなことに怯えている状況なのだと思います。しかし、第2波、第3波の可能性を示唆され、地域によっては小さいながらも第2波が現実になってきていることを考えれば、注意深くなることが決して過剰防衛であるとは思いません。
私自身もそうですが、自宅で過ごすこと、買い物をしないこと、飲み会をしないといった生活に慣れてしまった面もあります。テレワークをしていた人々は、当初は不便なことも多かったと思いますが、次第に慣れ、環境も整えて、混雑した電車での通勤が戻ってくることにウンザリされているのではありませんか。感染の不安の中で店に行って飲み会をするよりオンライン飲み会の方がいいと思っている人も結構多いかもしれません。
確かに、ウイルスとの闘いにおいて「やりすぎ」とか「過剰」ということはないのですが、一方で経済や、そして個人の心の豊かさといった視点で考えると、本当にこれでいいのかという考えにも至ります。感染が少し落ち着いた今だからこそ、コロナウイルスの怖さと生活や経済の豊かさのバランスをどのようにしたらいいのか、じっくり、しっかり考えたいものです。感染が拡大し始めたころによく言われた言葉ですが、今こそ「正しく怖がる」ことが、コロナとともに生きていかなければならなくなった私たちに突き付けられた課題なのだと思います。

nf528主宰 二神 典子