マイナスをプラスに変換 2

前回に続いて新型コロナウィルス関連の話題です。新型コロナウィルスの感染者が増えていた中国・武漢から、政府のチャーター便で最初に帰国された人たちがしばらく滞在することになった千葉県勝浦市のホテル、最初は名前を発表されていませんでしたが、すぐにそれがホテル三日月だとわかりました。勝浦という地名も、ホテル三日月も、千葉県をはじめ関東周辺の方々はよくご存じだと思いますが、それ以外の方々には馴染みの薄い名前ではないでしょうか。
いくらきちんと検査がされて大丈夫と言われても、新しくて正体がよくわからないウィルスのこと、帰国された方々を受け入れるのは、ホテルにとって勇気と大きな決断がいったに違いありません。
ホテルの近くに住む人々もまた不安に駆られたことと思います。インタビューではそんな声が聴かれました。市役所にも多くの問い合わせが届いたようです。そこで、勝浦市では、状況をきちんと説明した印刷物を全戸に配布し、市民の理解を求めたと知りました。市の対応としては、記者会見という間接的な手段だけではなく、旧式な方法ではあるものの全戸に直接印刷物を配布したことは良かったと思います。この対応が功を奏したのか、市民の不安は、帰国者を思いやる心に変化していったようです。
隔離されて直接触れ合うことはできない人たちのために、それぞれが工夫をして、砂浜にメッセージを書いたり、窓の下から呼びかけたり、手紙を書いたり、折り鶴を贈ったり…。市民たちの行動が、心細い思いをされていた帰国者の方々とって、どれだけ大きな力になったかは容易に想像ができます。
全員の陰性が確認されて帰国者の方々がホテルを後にされる日、多くの市民が見送りました。帰国者と市民、両者の間に絆のようなものが生まれていたのかもしれません。
何年か後、このホテルに滞在された方々が家族と一緒に勝浦に戻ってこられるかもしれません。メッセージが書かれていた砂浜を歩いてみようと思われるかもしれません。ホテルの方々に、勝浦市民の方々にお礼を言いたいと思われるかもしれません。
その様子をテレビで見ていた人たちで、いずれ勝浦を訪れてみようと思った人も少なくないでしょう。関東周辺の人しか知らなかった町を、ホテルを、全国の人が知ることになりました。
一部、心無い人たちによる風評被害が残るかもしれませんが、コロナウィルスの感染が収まったあと、ホテルにも町にも以前より多くの観光客が訪れると思います。その時、それらの人たちをどのようにもてなすのか、観光客がテレビを通して感じた温かい心を実際に経験できるのか、それが次の課題だろうと思います。
3月1日、今日、消毒・清掃を終えてホテルは営業を再開します。

nf528主宰 二神 典子