働き方改革って誰のため?

4月1日、働き方改革関連法の運用が開始されました。この日は、新しい元号「令和」の発表に浮かれていて、それほど大きなニュースにならなかったようですが、私は日本経済や人々の暮らしを左右する大きな出来事ではないかと思っています。
過労死やサービス残業など、働く人々を取り巻く環境には課題がたくさんあります。せっかく有給休暇の制度はあるのに、それを取りづらいような雰囲気が企業の中にあったことも事実です。このような問題は速やかに解決しなければなりません。
一方で、個々の企業にはどうしてもやらなければいけない仕事、作業があります。従業員一人当たりの勤務時間が減れば、それらの仕事を片付けるために、別の人を雇わなければいけません。例えば、これまで10人の従業員だった場合、11人に増やさなければいけなくなるということです。
ところが、世の中は人手不足。なかなか期待する人材は確保できません。仮に確保できたとしても、給料以外の手当とか、保険料や年金の会社負担分が増えることも考えられ、結果として増えたコストに耐えられないで倒産する企業も出てきます。
中小零細企業の場合、そのしわ寄せは最終的に経営者に重くのしかかり、経営者が夜中にレジ打ちをしたり、時間外の修理依頼に飛び回ったりしなければならなくなるなど、経営者の過労死につながるかもしれません。
しかし、技術というのは困難な状況が生まれた時に、それを解決する方法として発展をするものです。私は、コンピューターやロボットなどの技術に関しては専門外ですが、既に課題を解決するのに十分な技術は確立されていて、それらの技術を見えてきた課題に合わせて製品やサービスに組み込んでいけばいいというところまで来ているのだろうと思っています。
無人レジや無人店舗などの実験が既に始まっています。銀行はインターネットで利用でき、窓口どころか、できた時にはあれだけ便利だと思っていたATMに行くことも減ってきていて、店舗やATMはどんどん縮小されています。
今は過剰労働に耐えている経営者たちが、従業員やパートの人たちを減らしても十分にやっていけるシステムやサービスを手に入れる日も近いでしょう。ここに新しいビジネスの芽がある一方で、働く人々にとっては働く場所がなくなってしまう、そんな危機的な状況に進む道を後押ししてしまうのが、働き方改革であるように思います。
法律の改定は、ある事柄を一方的に見るのではなく、あらゆる観点から検討して、また当面の解決策ではなく将来にわたる解決策を見いださなくては、結局は、守りたい人々に損害を与える結果になりかねないのではないでしょうか。

nf528主宰 二神 典子