サムサノナツハ……

ずいぶん昔のことなのではっきり覚えていませんが、中学生のときか、高校生のときか、国語の時間に、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」という詩について勉強をしました。また、歴史の時間には、冷害による飢饉で多くの人たちが亡くなったことも学びました。
しかし、西日本しかしらない私にとって(島根県松江市で生まれ育ちました)、これらのことはどうも実感としてとらえることができませんでした。それが、大学生になり東京で暮らすようになってしばらくたったころ、冷夏を経験して、初めて実感としてどのようなことがわかったのです。
「サムサノナツハオロオロアルキ」。その時、思い出したのが「雨ニモマケズ」のこの一節でした。西日本では例年より気温が低く、晴れない日が続いていても、夏に寒いと感じることはありませんが、東京では夏でも「寒い」と感じる日が続くことがあるということを、その年に初めて知ったのです。
今年、東京では気温が低い日が何日も続いています。何日も、青空を見ていません。お日さまの光を浴びていません。7月に入ったらお天気のいい日に1泊でドライブ旅行に出かけようと考えていたのですが、いつ見ても天気予報が晴れになってくれません。
しかし、そんな呑気なことを言っていられる状況ではなくなってきています。ここのところテレビの情報番組ではキュウリやナスが日照不足で育ちが悪く、曲がってしまって売り物にならないという農家の方の深刻な声を伝えています。当然、夏野菜の価格は日に日に上がり続けています。
このままこんな日が続くと野菜だけではなく、お米もできないかもしれません。今年は、外国から米を緊急輸入した、あの年の気象に似ているのだそうです。宮沢賢治が生きた時代や江戸時代とは違い、今は米が取れなくても餓死する人がいるわけではないと思いますが、農家の収入は激減してしまいます。
この原因は温暖化によるものなのでしょうか。それとも…何か別の原因によるのでしょうか。
暑さに弱い私ですが、我慢します。青空を見せてください。野菜や米たちにたっぷり太陽の光をあげてください。

nf528主宰 二神 典子