ロシアンルーレット

8月14日、イタリア・ジェノバで起こった高架橋崩落のニュースを見て寒気を覚えました。テレビの画面や新聞の写真は目を覆いたくなるようなものでした。しかし、これは他人事ではありません。今、2020年開催のオリンピックに向けて、東京は建設ラッシュです。
前回、東京でオリンピックが開催されたのは1964年。その時も、新幹線や高速道路などの建設が急ピッチで進められ、続いて高度経済成長の波に乗って、たくさんの道路や橋が整備されてきました。これらのおかげで、私たちは便利に快適に移動ができるようになるなど、たくさんの恩恵を受けてきました。これこそ東京オリンピックの輝かしいレガシーだったのだろうと思います。
しかし、あれから50年余が過ぎ、それらの道路や橋は老朽化が進み、早急に対策を講じないと危険な個所がたくさんあると言われて久しくなります。それなのに橋の補修や架け替えなどの工事は一向に進んでいません。

2012年12月2日、中央高速の笹子トンネルの天井板が崩落し走行中の車両3台が下敷きになった事故を覚えている方も多いと思います。その数週間前、ペーパードライバーを返上し、やっと一人で遠出ができるようになった私は、このトンネルを通って甲府までのドライブを楽しみました。そんなタイミングで聞いた笹子トンネルの天井版崩落の事故は、決して他人事とは思えませんでした。何かがほんの少しズレていたら、犠牲になったのは私だったかもしれない、そう思えたからです。
そこを通った時にセーフなのか、アウトなのか、高速道路を走る度に、橋を渡る度に、私たちは運を試されているように思えてきました。まさしくロシアンルーレット、命がけのゲームのようです。しかし、大切な命がこんなことでアウトになるようなことがあってはいけません。早期な点検と修復、整備が喫緊の課題です。
人手が足りない、予算がない。その現実はよく理解できます。それだからこそ、少子・高齢化対策、自然災害対策、軍備など、個別ではなく、ありとあらゆるものを同時に見直し、無駄をなくし、優先順位をつけて、我慢できるところは我慢して、確実に前に進めていかなければいけないのだと思います。
前回の東京オリンピックの輝かしい遺産が負の遺産に変わらないよう、みんなで知恵を出し合いたいものです。また、今進められている2020年東京オリンピックのためのインフラ整備が、50年後にまとめて負の遺産とならないよう、メンテナンスなどもしっかり計画に入れて、進めていただきたいと願っています。

nf528主宰 二神 典子