成人の日に思う

成人式の記憶はありません。私が成人式を迎えたのは、はるか昔のことですが、だから思い出せないのではなく、そもそも成人式に出席していないからです。
私は当時、大学生。成人の日は後期試験の期間中または直前で、成人式どころでなかったのです。私は、世田谷区にあった大学の寮にいました。住民票はそこに移していましたから、世田谷区から成人式の案内が届いていたかと思いますが、それも思い出せません。ただ、記念品として東京都の地図帳をいただいたことだけはよく覚えています。今のようにスマホで地図検索をするという時代ではありませんでしたから、その地図帳は随分重宝して、長い間大切に使っていました。
寮には同い年の寮生がたくさんいましたが、多分、ほとんどが成人式には出席していないと思います。
成人式に振り袖を着せたいと思っていた母親の夢を裏切ってしまいましたが、どうしても娘の振り袖姿を見たいと思っていた母は「2~3度しか着ないものを作ってももったいないだけだから」と断固拒絶した私の意思を見事に無視して、卒業式にその夢をかなえました。
結局3回くらいしか着ていない私の振り袖は今、納戸の中の引き出しの奥深くに眠っていますが、今年は、成人式で母親の振り袖を着るのが流行っているというニュースを見ました。「ママ振り」というのだそうです。昨年の成人の日に、せっかく用意した着物が届かなくて悲しい思いをした新成人たちがたくさんいたというニュースは今でも鮮明に覚えていますが、おかあさんの振り袖ならその心配はありませんし、その着物を誂えた祖母の思い、着た母の気持ちがこもっていて、成人の日により温かい思い出ができることと思いました。
成人の日はお祭りとか、イベントというのではなく、責任ある大人として歩き始める厳粛な日です。今年の成人の日が、新成人たちにとって、大人としての心構えを確認し、夢や希望に胸を膨らませる一日であったならうれしく思います。
人生は山あり谷あり、いい時もあれば辛い日もあるでしょうが、ガンバレ!

nf528主宰 二神 典子