水との闘い

私は、日本海側の島根県松江市の出身。子どもの頃、冬と言えば、ほとんど毎日どんよりした灰色の空で、根雪になるほどではないものの、雪が降ることもよくありました。年末の大掃除は本当に寒くて大変だったという思い出があります。
 大学に入って上京しましたが、その時、何が嬉しかったかと言えば、冬にいつも青空を見ることができるということです。
 昔に比べて雪の量は減っていると言われていますが、それでも大雪に見舞われてクルマが動けなくなったというニュースを時折見ます。何より、あのどんよりとした空の色はかわってはいないでしょう。
 一方、東京は毎日、乾燥した日々が続いています。以前に住んでいたマンションは少し加湿すると結露が大変で、窓の水滴を受けるためにタオルを敷いていて、濡れたタオルを替えるのに追われていました。今、住んでいるマンションは、二重サッシになっていて結露になることはありません。冬でも、暖房が必要な日はごくわずかなほど温かく快適に過ごせるはずなのですが……。
 気密性の高い最近の家は、マンションでも一戸建てでも24時間換気をするようになっています。ですから、加湿しても加湿しても、外からの乾いた空気が入ってきてしまうので、なかなか湿度が上がりません。ある日、肌に感じる空気感に耐えられなくなりました。湿度が25%しかなかったのです。そこで慌てて加湿器を買いに出かけました。その時、結構大きな加湿空気清浄機を購入しましたが、十分ではありませんでした。その後も加湿器を買い足し、この冬、ついに4台になりました。
 それほど広くないわが家ですか、この4台の加湿器がフル稼働しています。それぞれの機器の能力を合計すると、実はわが家の面積の2倍ほどにもなります。それなのに、ようやく50%の湿度を保つのが精いっぱい。その結果、次から次へとタンクが空になってしまうので、私は4台の加湿器のための水汲みに忙しく、落ち着かない日々を送っています。
 あと2か月、この闘いは続きます。雪は生活を大変にしますが、今、あの雪の日の、切れるほど冷たいけれどどこか肌触りの優しい空気感を懐かしく思い出しています。

nf528主宰 二神 典子