実際にある小川が消えたという話ではありません。小川は確かにそこにあるのですが、地図から消えてしまったという、フランスでの話です。
フランスでは、農薬が川に流れ込んで汚染されるのを防ぐために、小川の近くで農薬を使用してはいけない、という法律があるそうです。ご存じのように、フランスは農業大国です。農地を拡大して雇用を増やそうとしたのが、小川が地図から消えた理由とのことですが…。
つまり、小川さえなければ農地にして農薬を使って作物が作れるという考えです。これってなんだか変だと思いませんか。いくら地図から消しても、実際に小川はそこにあるのです。その小川に農薬が混入すれば、汚染されます。地図にない小川がそれだけで完結するわけではなく、地図に記された小川につながっていて、汚染された水が流れ込む可能性だってあります。
そもそもなぜ小川の近くで農薬を使ってはいけないという規制ができたのか。それは、環境を守り、健康を守るためだったはずです。それを忘れて、地図から小川を消してこれで問題解決というのはどうにも理解ができません。
この原点を無視した安易な方法は、なにもフランスの小川の問題に限ったことではありません。日本も含めていろいろなところで、いろいろな形で実際にある問題だと思います。日本で大きく問題になったのが原子力発電所の安全問題でしょうか。「安全だ」と言い続けてきたために、専門家でさえ「危険」という意識が薄れ大きな事故につながってしまいました。そもそも原子力は「危険」だと認識していれば万全を期してその対策を考え、万が一の場合に備えられたと思います。
フランスの場合も農地の拡大は必須事項かもしれませんが、それならば小川を地図から消すのではなく、小川の近くに農地開発をするための特別措置を検討して、農薬の種類や量などを規制し、小川の水質検査を義務付けるなどの監視体制を強化する方が、環境や健康への悪いリスクが少なくて済むのではないかと思います。
悪いものは悪い。ダメなものはダメ。小手先の対応は、その場はごまかせても必ずなんらかの悪い結果に結びつきます。「そもそもなぜ」を理解して、現在の課題とすり合わせ解決策を見つけなければいけません。原点に返ってみることを忘れてはいけません。これは個人にも当てはまります。わが身に置き換えて心せねば。
nf528主宰 二神 典子