ブランドを消す

ブランドを構築すること、そのブランドに良いイメージをもってもらうことは、企業にとって大きな意味をもっています。スマホに背面にあるリンゴを見ればアップル社製のiPhoneだとすぐにわかります。自動車の前や後ろにはいろいろなロゴがついていますが、それを見ただけでどの企業の製品なのかがわかります。同時に、自分のお気に入りの企業の製品だと購買意欲がわいてきます。
いま、コロナ禍にあって、食品のデリバリーが注目を集めています。私がデリバリーで思いつくのはピザや寿司くらいですが、今は、本当にいろいろな料理を配達してくれます。これは、客の足が遠のいた店の生き残り戦略の一つなのだと思います。
昔の出前とは違い、配達はそれぞれの店でするのではなく、商店街でいくつかの店が協力して配達システムをつくったり、配達専門業者を使ったりしています。食品のデリバリーで多くの人が一番に思い出すのがUber Eatsでしょうか。Uber Eatsは、2014年にアメリカ・カリフォルニアで誕生し、日本に入ってきたのは2016年とのことですが、この一年で実際に目にする機会が随分増えました。
新型コロナに感染するのが怖いという人、なかなか外食がしづらい中でたまにはレストランの味を楽しみたいという人が多く利用するのでしょう。一方で、仕事を失った人の受け皿としても話題になっています。デリバリーに頼らざるを得ない飲食店のお役にも立っています。そして、ニーズが増え、知名度が上がり、運営企業にとってもビジネスチャンスだと思います。
配達員たちが背負っている黒くて大きな箱とそこに書かれているUber Eatsの白と緑の文字はとても印象的で、これぞまさにブランドを知ってもらうのには「最高の演出」のはずですが…。最近、その文字にテープを貼るなどして隠している配達員がいるというニュースを見ました。
Uber Eatsの配達員とわかると、嫌がらせをされるというのです。Uber Eatsと言えば、自転車で高速道路に侵入したり、信号無視をしたりといった交通ルールを無視した危険な行為が何度も報道されています。また、迷惑をかけられても誰がやったのかを特定するのは難しかったり、会社は配達員個人の問題として取り合わなかったりという問題もあるようです。
おそらく、ルール違反をして迷惑をかけるのはほんの一握りの人で、特殊な事例だと思いますが、私たちはすべての人がルール違反をしているように思いがちです。また、会社が取り合ってくれないというのもブランドイメージを悪くする要因です。その結果、善良な配達員が嫌がらせを受けてしまうのでしょう。
そこで、例えばすべての配達員にナンバーをつけ、背負っている箱に書かれているUber Eatsの文字の下や左右に目立つようにそのナンバーを明記すれば、配達員が交通ルール違反などの危険行為や迷惑行為を行った場合にその人物を簡単に特定できるようになります。それによって、配達員の意識も変わり、質もおのずと向上することでしょう。
配達員は企業に雇用されている従業員やアルバイトではなく、個人事業主になるのだそうですが、だからといって個人の責任と知らん顔をするのではなく、仕事を依頼したからには、ブランドを構築する一員として、企業にも社会的な責任を取るという姿勢が必要だと思います。
コロナ禍にあって、デリバリーは重要な役割を果たしています。前述のように多くの人が、それぞれの立場で助けられています。ブランドを消すのではなく、ブランドを競い合って、それぞのデリバリー企業が発展していくことを願っています。

nf528主宰 二神 典子