リモート老眼

目は誰にとっても大切なものですが、編集者の私にとって「目は命」と言うほど大切なものです。小さな文字やデザインの細部にわたるまできちんと確認できなければ。いい仕事はできません。
寄る年波には抗(あらが)えず、少しずつ老眼が進行してきて、自慢の視力も落ちてきていました。それでも度の低い老眼鏡で矯正する程度で細かい部分の確認まででき、普通の校正作業や新聞を読む程度ならメガネなしでこなすことができていました。
さて、昨年の春以来、コロナ禍にあって予定されていた会合はほとんどキャンセルになり、時間に余裕ができたと言いますか、暇になったと言いますか、それまで避けていたスマホのゲームを始め、スマホを見ている時間が増えました。
仕事柄、もともとコンピューターに向かっている時間は長い方で、それに加えてスマホやテレビ、本など、目を酷使する生活を続けていたところ、秋頃からでしょうか、急に文字が見えづらくなり、普通の校正作業でも眼鏡が必要になってきました。
年が明けたころからは、さらにその症状が悪化して、ついに先日、右目が絶不調の状態に陥ってしまいました。焦点が合わないだけではなく、違和感があるし、涙が出るし…。とにかく目を休めなくてはと思ったのですが、起きている限りは目を使わないわけにはいけません。スマホゲームは我慢できるとしても、仕事をしなければいけませんから、コンピューターを見ないわけにはいけません。
いろいろと考えた結果、しばらくの間、右目に眼帯をして生活をすることにしました。それに加えて、窓の外の遠くの景色を見たり、蒸しタオルで目を温めたりしています。左目だけでも、日常の生活はそれほど困りませんが、左目も弱っている状態です。コンピューターの文字はいつもより拡大しないと判別がつきません。
このような状況に陥って、昨年春以来の生活を深く反省していると、テレビのニュース番組で、最近、眼科を受診する人が増えているという話を知りました。リモートで仕事をするようになってコンピューターと向き合う時間が長くなったり、時間ができてスマホを見る時間が長くなったりしたのが原因だそうです。老眼は、20歳代、30歳代の若い人たちにも増えているとのこと。これを「リモート老眼」と呼んでいるそうです。
これもコロナ禍の一つでしょうか。しかし、リモートワークはコロナウイルスの感染拡大に伴って進行速度が少し早まっただけのこと。コロナ克服後も元に戻ることはないと思います。コンピューターやスマホのない生活など考えられない時代です。前述の通り、そのニーズはコロナ禍にあって一層増していますが、十分に気をつけながら向き合わなければいけません。おかげさまで、私の症状は少し改善しました。皆さまもお気をつけください。

nf528主宰 二神 典子