今回はタイトルが少し長いのですが、これは東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長の森喜朗氏の発言。多くの批判を受けて謝罪の記者会見をしたものの、それがかえって火に油を注ぐ結果になっています。
しかし、声にはなっていませんが、多くの、特に年配の男性の中には「その通り」と賛同している方も少なくないように思います。
私は、これまでに国内外問わず、多くの理事会や委員会に出席した経験がありますが、日本人だけの会議の場合、淡々と議事が進行していき「ご質問、ご意見は?」と問われてもほとんど手を挙げる人はいません。そんな状況にもかかわらずよく質問をしたり反対意見を述べたりする私は、ほかの男性委員や理事からは同じような目で見られているかもしれません。
しかし、私が会議の席上で積極的に意見を言うのには、経験からきた理由があるのです。
今から20年ほど前のことです。私はその時初めて国際的な会議に出席しました。この会議は世界で発行されているロータリーの雑誌の編集長会議です。3年に1回定期的に開催されていて、また、編集長たちは国際大会やその他の会合でも顔を合われる機会がありますから、多くが顔見知りです。そこに編集長に就任して2か月足らずの私が出席したのです。当時既にロータリークラブにも女性会員が増えてきていましたが、女性の編集長は私が初めてということで、皆さん、興味深く待ち構えていらしたようです。
会議は、それぞれが事前に与えられてテーマに関する短いスピーチを行い、それに対する質問や意見交換をするという形で進められていきました。私は、新米編集長でしたが、編集者として長年ロータリーの雑誌にかかわってきていましたので、多くの意見やアイデアをもっていました。ですから、会議ではできるだけ発言をするように努めました。
ある提案に関して次々と賛成意見が出される中、随分後に発言の機会を与えられた私はいきなり「反対」と申し上げ、その理由を述べました。それまで賛成していたある編集長が、私の意見を受けて、以前に聞いた専門家の話として、私の意見を裏付ける話をしてくれました。そのことによって、会議の空気はがらりと変わり、結局、多数決を取ることもなく、その提案は却下されることになりました。
この後のコーヒーブレイクの折には、多くの人に取り囲まれ、もっと話が聞きたい、一緒に仕事がしたいと言っていただきました。私はよそ者のお客さま扱いをされているように感じていたのですが、初めて仲間として認められたと思ったのです。その時わかったことは、「自分の意見をきちんと伝えた方が信頼され、認めてもらえる」ということです。
国内の会議にはなかなか当てはまらない経験ですが、その後、国際会議はもちろんのこと、国内の会議でも積極的に発言するようにしています。これは、ほかの女性委員への競争心ではなく、少しでも良い方向に持っていきたいという思いの表れなのです。
理事会で発言することは、男性とか女性の問題ではなく、自分が理事として、委員としてかかわっているその組織を良くしたいという気持ちがあるか、地位や名誉のためにその席に座っているのではなくその役職を辞す覚悟、責任をもって臨んでいるかの問題だと考えます。
同じように組織のことを考えていても意見が対立することは、よくあることです。それぞれの意見を十分に引き出し、効率良く結論へと導くのが、理事長、会長、委員長、議長といった方々の手腕の見せ所。「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」とおっしゃるのは、「自分は能力がない」と告白しているのと同じと受け止めましたが、皆さまはいかがお考えでしょうか。
nf528主宰 二神 典子