だから「何なの?」

前回は取材依頼について書きましたが、今回はその続きです。
取材依頼が受け手のメディア側から見るとわかりづらいのはなぜかと言うと、依頼側と受け手側に認識のズレが生じるからです。ズレといっても誤解というのではありません。知っている範囲の差のことです。発信側は自分たちのことですし、それまでに準備を重ねてきたことですから、そのイベントや製品についてよく知っています。一方でメディアの側はそのことについて基本的な情報すら持っていない場合も少なくないのです。
その場合、発信側は、例えば5段階あるうちの3段階から書いてしまいがちですが、受け手の側はその前段階がわからないので、何をやろうとしているのか理解できないということになるのです。だからと言って1段階、2段階について詳しく書きすぎても「結果的に何を依頼しているのかわからない」ということになります。
コミュニケーションを円滑にするというのは専門的で難しいことなのです。ですから、広報や広告の専門家に依頼して案内状を作成してもらったり、できれば自社で専門家を雇用したりするといいのですが、それだけの余裕のある企業は少ないと思います。
そこで、慣れない社員でメディアへの取材依頼を作成するということになるのですが、その場合、メディア側とのディスコミュニケーションを回避するために、社内でそのプロジェクトと関わりが少ない人に取材依頼を読んでもらって、その人が十分に理解できているか、どこがわかりにくいのかをチェックするといいと思います。100%とはいかないにしても、随分わかりやすく、言いたいことが整理された文章に仕上げることができるでしょう。
ところで、前回「何をするのか、どのような製品かなど、中身が一目でわかる見出しをつける」と書きましたが、ただ「わかる」だけではなく、現在、多くの人が関心をもっていることをキーワードとして入れると受け手が目をとめる可能性が高くなります。例えば今なら「新型コロナウイルス」をキーワードに、感染拡大防止に役立つ何かを絡めるといいと思います。しかし、これだけ話題が多いと、その中で目立つのは難しいことでしょう。そこで、自社のことについて理解の浅いが、流行をよく知っている柔軟性のある若手社員のアイデアを借りると、思いもよらないことに結びつけてくれるかもしれません。
見出しやタイトルをつけるのは、編集者にとっては大事な仕事ですが、魅力的なタイトルや見出しをつけるのは専門家でも難しい作業です。しかし、たくさん送られてくる取材依頼の中から見つけてもらい取材に来てもらうためには、大切な第一歩です。少なくともそのことを意識して、見出しやタイトルを考えてみてください。

nf528主宰 二神 典子