モノは言いよう

新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて、首都圏では2度目の緊急事態宣言が出されました。それにもかかわらず、人出は大きくは減っていないようです。なぜなのでしょうか。
一つには、みんながこのウイルスに慣れてしまい怖がらなくなったことが挙げられています。確かに昨年の春頃とは違い、治療方法が見えてきて重症化したり亡くなったりという確率は減ってきているかもしれません。一方で、最初の頃はわからなかった後遺症で苦しんでいる人が増えています。後遺症は、症状が軽かったり、無症状だったりした人にも出ていますが、「若い人は重症化しない」という情報が一人歩きし始め、その後でわかってきた後遺症に関しては情報がスルーしてしまっているようです。自分に都合のいい情報だけ聞き、都合の悪い情報は聞こえないというのは、コロナに限らずよくあることです。
さて、今回の緊急事態宣言で特に強調されたのが「飲食」が危ないということ。そこで、首相も知事たちも、飲食店の営業を8時までに制限し、人々にも夜8時以降の不要不急の外出は控えるようにというメッセージを発信しました。
日本人の多くは、罰則規定などなくてもルールに従います。苦しい経営状態の中、午後8時で営業を切り上げ、人々は仕事が終わると急いで帰途につきます。しかし、多くの人が同時に「午後8時前なら出かけても大丈夫」というメッセージも受け取ってしまったようです。ですから、昼間は急ぎの用がなくても外出してしまうのです。
「不要不急の外出は避けてください。特に午後8時以降は用事の内容にかかわらず出かけないようにしてください」と言えば、「昼間なら出かけてもいい」という受け取り方はしないのではないでしょうか。
どちらも同じことを言っているのですが、受け止め方は大きく異なります。ウイルスには昼も夜もありません。夜の外出はダメで、昼の外出はOKだなんてあり得ないことは、素人でもわかることです。しかし、先述したように、私たちはモノゴトを自分の都合のいいように解釈してしまいがちですから、緊急事態宣言を発信する場合は、都合よく解釈されそうな部分をきっぱりと打ち消すような言い方が大事なのだと思います。
残念ながら、日本人の多くは、スピーチなど、メッセージを発信するための教育を受けていません。政治家も企業のトップも同様です。私たちは、その表現が未熟なところ、言葉が足りないところを、多くの信頼できる情報を元に、きちんと埋めていかなければ正しい判断ができません。話し手だけでなく、聞き手の能力も試されています。

nf528主宰 二神 典子