あの手この手で困難に立ち向かう

新型コロナウイルスの感染拡大の感染拡大に伴い、多くの都道府県に緊急事態宣言が出されています。今回、一番注意を喚起されたのは「飲食」。多くの飲食店が苦境に陥っています。
外出時にはマスクは必需品。家庭内においても感染防止のため「できるだけマスクを」と言われている状況でも、外さないと食事をすることはできません。
アクリル板を設置し、客席の間隔を空け、換気を十分にしている店でも、近くの席の人が食事をしながら、マスクなしに、ハンカチなどで口元を覆うことをせずに話をしていたら、不安になると思います。ですから、どうしても足が遠のいてしまうという方も少なくないでしょう。
ある店で「黙食にご協力ください」(「黙食」という文字は遠くからでも目立つように特に大きな文字で書かれています)と貼りだし、協力してくれた客には無料で一品サービスをしたところ、反響があり、お客さんからの評判も上々とのこと。他店にも共有しようと自由にこのポスターが使えるように提供し、広がりを見せているとのニュースを見ました。
この店、最初は「ノーマスクでの会話はお控えください。感染防止にご協力を」と貼りだしていたそうですが、あまり効果がなかったようで「黙食」と打ち出したとのこと。首相や知事たち、そして医師や専門家など、多くの人が「マスクをしてください」「食事中の会話は控えてください」と四六時中訴えています。その言葉に一年近く付き合って、窮屈なマスク生活を続けている私たちには、この呼びかけが届かなくなってきています。単に「またか。そんなことわかっているよ」となるのです。
しかし「黙食」と一言で打ち出されると、「あれ?」と注目し、思わず従ってしまいそうです。それに多少なりともオマケがつくとなると、店主の作戦にまんまと乗せられてしまうことでしょう。
「黙食」という言葉は、倒産か廃業かのギリギリまで追い詰められている飲食店の経営者の悲鳴のようにも聞こえます。同時に、「火事場の馬鹿力」ではありませんが、追い詰められた人間の強さを思い知らされます。
「ウィズコロナ」コロナが日常になった私たちの心を動かすためには、ありきたりの呼びかけではなく、前向きで、積極的で、力強い言葉が必要です。発想の転換が求められています。前回のコラムに「モノは言いよう」と書きましたが、この事例も「モノは言いよう」の典型例。
首相や知事たちにも、この表見方法、発想を見習ってほしいものです。追い詰められた庶民は、いま必死で生き延びようとしています。

nf528主宰 二神 典子